後継者不足で増加中のEBO。メリット・デメリットと成功のポイント

EBOとはイメージ

業界問わず、後継者不足に悩む経営者や企業がますます増加してきています。

そんな中、事業承継の手法の一つとしてEBO(Employee Buy Out)にて成立するケースも珍しくなくなってきました。

今回は、事業承継についての知識を深めたい方に向け、EBOの流れと成功のポイントについてまとめました。

参考にしていただければ幸いです。

そもそも事業承継って?という方は下記の記事をご参照ください。

【関連記事】事業承継とは?成功させるポイントと流れについて解説

EBOとは?

EBOとは説明イメージ

まず初めに、EBOとはどういう手法であるのかについて解説します。

EBOとは、Employee Buy-Outの頭文字をとったもので、直訳すると「従業員による企業買収」となります。

つまり、従業員が自社の株式を買い取り経営権を取得することで、事業承継を成立させる手法です。

冒頭でも触れた通り、現在日本は少子高齢化の影響を受け、慢性的な後継者不足に陥っています。

EBOでは従業員が主体となって買収を行い、事業を存続させることができるため、近年では特に中小企業を中心として増加傾向にあります。

EBOとMBO・LBOとの違い

EBO MBO違いイメージ

EBOと似たような手法として、MBO(Management Buy-Out)というものがあります。

こちらはその名の通り、企業の経営陣が主体となって自社の株式を買い取り、事業継承を成立させる手法です。

中小企業に多く見られるEBOと対比して、MBOは上場企業が自社の株式を非公開化するケースでよく用いられます。

特に、EBOは単純に事業承継を意図して行われる傾向にある一方で、MBOは敵対的買収や主要株主との対立リスクを回避する際にも行われます。

形式としては、自社の株式を買収する主体が従業員か経営陣かという違いですが、その性格は少し異なることも多いです。

また、事業承継の概念の一つとしてLBOというものもあり、こちらもよく混同されて語られることがあります。

LBO(Leveraged Buy-Out)は、レバレッジ、つまり「てこの原理」を用いた事業承継手法です。

この方法であれば、買収先の企業のキャッシュフローを担保にすることで、金融機関から資金を買収資金を調達することができます。

つまり、自己資金が十分でなくてもリスクを抑えつつ、事業承継が可能となる点が特徴です。

MBOについて詳しく知りたいという方は、下記記事にて解説しておりますのでご確認ください。

【関連記事】MBO(Management Buy-Out)とは?類似手法との違いや流れについて解説

EBOのメリット

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EBOにより事業継承が成立した場合に得られるメリットとしては、下記のようなポイントが挙げられます。

・経営者の親族以外にも承継できるため、後継者不足の企業も存続することができる。
・経営方針の大幅な変更や環境の変化を抑えて承継できるため、従来通りの経営が実現しやすくなる。
・買収の主体となる従業員の意向さえ合致すれば、スムーズな承継が実現できる。

まず何よりも大きな点として、EBOではこれまで業務に携わっていた従業員が経営権を握ることになります。

後述の通り、金銭的な部分も踏まえて多少のハードルやリスクは避けられませんが、経営を承継する従業員が見つかれば、かなりスムーズに引き継ぐことができるでしょう。

経営を引き継ぐ従業員のスキルアップやモチベーションの向上といった点も付随するメリットとして期待されます。

特にEBOが成立しやすい中小企業では、外部の株主が少ないため、そちらとの交渉や調整も不要であることも大きなメリットです。

EBOのデメリット

EBOデメリットイメージ

対して、EBOを実現する上でのデメリットは下記のような点が考えられます。

・買収の主体となる従業員の選定が難しく、なかなか意思が合致しないケースがある。
・株式の買収にはまとまった資金が必要となるため、資金力が必須になる。

EBOによって事業承継が実現できれば、従来の経営方針を維持したまま企業が存続可能です。

ですが、なかなか一従業員に経営を引き継ぐということは簡単ではなく、主体となる従業員が見つかりにくいというデメリットがあります。

一定の資金力がなくてはならないため、金融機関の融資が必須になることも多く、審査をクリアしなくてはならない問題も無視できません。

また例え優秀な従業員であっても、いざ経営となるとまた異なる能力やスキルが要求されるため、適正を慎重に見極める必要があるでしょう。

さらに、経営者の年齢が若くなることで革新的なアクションがとりやすくなる傾向はあるものの、経営の大部分は従来のスタイルを引き継ぐことになります。

各企業次第ではあるものの、あまり好ましくない慣習や体質があるのであれば、それらも改善されずに残ってしまうリスクも考えられます。

EBOには魅力的なメリットが多い一方で、十分に検討を重ねつつ進めていく必要があるといえるでしょう。

EBOの流れ

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続いて、実際にEBOが成立する際の大まかな流れについて解説します。

1.買収の主体となる従業員を探し、選定する

まずは買収を行い、経営を引き継ぐ従業員がいないことには承継は始まりません。

リーダーシップがあり、周りの従業員やスタッフからの信頼も厚い人材を探すことがEBOの第一歩目となります。

この際上記にて解説した通り、本人に経営を承継する意思があるのか、また経営者としての資質があるのかを見極めることが重要です。

経験豊富な従業員であることに越したことはありませんが、あまり高齢の従業員に引き継ぐことは好ましいことではないでしょう。

またすぐに経営者を交代するという事態にならないような人材を選定する必要があります。

2.株式評価を行い、譲渡価格を決定する

次に、自社の株価算定を行います。

この際、上場企業であれば、株式市場での取引によって株価は自動的に決定されます。

ですが、中小企業など非上場企業の場合は株式を公開していないことがほとんどであるため、市場で決められた株価が存在せず、こちらの算定を行う必要があります。

企業価値と株価については専門的かつ客観的な判断が必須になりますので、公認会計士など専門家に依頼するといいでしょう。

特に株主が多くいる場合、この譲渡価格の決定が最もトラブルになりやすいポイントのため、しっかりと時間をかけて調整・交渉を行い、公平性を担保することが重要です。

3.株式譲渡手続きを行う

株式譲渡は上記の株式の売買交渉が決着し、株主との合意を得た段階で成立となります。

一点、ほぼ全ての中小企業においては、株式に譲渡制限が設けられていることに注意が必要です。

自社の取締役会承認、株主総会といった自社期間の承認が無事得られた段階で、株式譲渡契約を締結し、EBOが完了となります。

EBO成功のポイント

EBO成功のポイントイメージ

EBOに限定したことではありませんが、事業承継やM&Aを成立させる際には、関わる人数も多くなり、多額の金銭が動くものです。

また株価算定や企業価値の評価など、自社だけでは対応できないような専門的な知識も必要になりますし、手続きも煩雑になります。

中小企業では比較的少ないながらも、株主が複数存在している場合は、各所へのケアがさらに必要になってきます。

各フェーズにおいて適切な専門家に依頼し、サポートを受けながら取り進めていきましょう。

新たな経営者となる従業員にスムーズに引き継ぐために、またEBO成立後も変わらずに働く従業員やスタッフが業務に集中できるように、公平で納得感のある環境で取り進めることがもっとも重要になります。

まとめ

従業員が企業の株式を買い取り、経営権を取得するM&A手法の一つであるEBOについて、解説して参りました。

後継者不足に悩む中小企業においての事業承継として、EBOは近年増加傾向にあります。

数々のメリットがあり比較的スムーズに運ぶ手法ではあるものの、やはり事業承継は一筋縄でいかないケースも非常に多いことが予想されます。

信頼のできる専門家のサポートを受けつつ、慎重に進めていくといいでしょう。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

エベレディア株式会社 代表取締役会長 中島優太

日本唯一の「サイトM&Aアドバイザー®」
エベレディア株式会社 代表取締役会長

中島優太

著書に「超入門! サイトM&A1年目の教科書 -売却編-」。サイトM&A業界の不親切に疑問を持ち、2016年5月に親切丁寧に売買仲介する「サイトマ」を創業。取引累計額15億円以上、400件以上を直接対面で仲介(2024年10月時点)。NHKクローズアップ現代プラスに専門家としてコメント。2019年アメリカはシリコンバレーにて講演。新聞、ラジオ、ビジネス雑誌に多数掲載。

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