多角化戦略とは?成功させるポイントについて解説
近年、当社でも仲介しているような小・中規模のものも含め、M&Aや事業承継が増加してきています。
また、コロナ禍や人手不足など様々な要因で、従来のビジネスとは異なる事業を始めようとしている方も多いでしょう。
そんな方に向けて、多角化戦略とはどのような内容なのか?またどのようなメリットがあるのかについて、概要を説明します。
多角化戦略とは?
多角化戦略とは、今まで企業が属していた市場とは異なる、新たな市場に製品やサービスを投入することで、企業の成長に繋げるという戦略です。
1957年にイゴール・アンゾフという経営学者が提唱した、成長のためのフレームワークである「製品─市場マトリックス」というフレームワークの中で出てきた考え方です。
下記の図のように、新たな市場で新たな製品で勝負する、というのが多角化戦略とイメージするとわかりやすいでしょう。
出典:経済産業省ミラサポplus 「アンゾフの成長マトリクス」
冒頭の通り多角化戦略とは、何らかの事業に関わる要因によって経営環境を変化せざるを得なくなった際に、企業が取れる手段の一つとなります。
多角化戦略4つの種類
説明した通り、多角化戦略は新たな市場に参入する戦略ですが、その展開方法によって、下記の4つの類型に分けることができます。
・水平型多角化
・垂直型多角化
・集中型多角化
・集成型多角化
それぞれ詳しく解説します。
・水平型多角化戦略
水平型多角化戦略とは、企業が持つ既存の技術やノウハウ、生産設備などを生かして既存の市場と似た市場にスライドする形の多角化戦略です。
ソフトウェアメーカーがクラウドサービスに乗り出したり、乗用車メーカーがバイク製造販売を開始したり、といったケースがこちらに該当します。
水平型の多角化戦略は既存の経営リソースを活用できる上、ターゲット層も近くなるため、比較的リスクが低い手法といえます。
・垂直型多角化
垂直型多角化戦略とは、既存の商流における川上または川下の事業に展開していく戦略となります。
例えば、卸売を行っている企業がプライベートブランドを立ち上げて新製品を開発・販売するという形が垂直型多角化戦略の代表例です。
既に保有する市場やニーズの情報、ポジショニングの分析などをフル活用できる一方で、市場全体の成長が鈍化すると、既存事業と共倒れの形になるというリスクもあります。
・集中型多角化
集中型多角化戦略とは、自社の持つ技術や強みに関連のある特定の新規市場にリソースを集中させ、多角化を図る戦略です。
フィルムメーカーが化粧品に参入したり、カメラメーカーが医療用レンズの製造・販売を開始したりといった形をイメージするとわかりやすいでしょう。
既存の技術や製造設備を活かしつつ、かつ完全に新しい市場に参入できるという点が集中型多角化の最大のメリットです。
ですが、既存市場と全く異なるフィールドでのビジネスとなるため、開発力や企画力が問われるという側面もあります。
・集成型多角化
集成型(コングロマリット型)多角化戦略は、既存リソースや市場とは全く異なる分野に参入する戦略です。
コンビニエンスストアや小売業を行う企業が銀行業務を開始したり、電子機器メーカーが保険サービスを展開したりといったケースが該当します。
全く異なる市場への展開となるため、資金・人的リソースが大いに必要となりますが、成功すれば莫大な収益の拡大が期待できます。
多角化戦略のメリット
多角化戦略を推し進める上で期待できるメリットとしては、下記の通りです。
・従来の市場では得られなかった収益の獲得を目指せる
・リスクを分散、軽減できる
・シナジー効果が期待できる
多角化戦略に成功すると、当然ながら、今までは参入できていなかった市場のシェアを獲得することが可能となります。
それにより、軌道に乗りさえすれば、売上・収益を大きく増やすことが期待できます。
さらに、従来とは異なる市場で売上の柱を立てることになるため、新旧どちらかの市場が停滞しても、どちらかの事業から収益を生み出すことも可能です。
市場の動向で大きく収益が増減する事業であるのであれば、多角化戦略により、リスクを抑えることができるでしょう。
また、異なる市場に展開することで、設備を有効活用したり、流通経路を共有できたりといった、既存市場との相乗効果(シナジー効果)が生まれることもあります。
従来までボトルネックとなっていた点が、強みに転じる可能性もあることが多角化戦略の大きなメリットとなります。
多角化戦略のデメリット
反対に、多角化戦略のデメリットとしては、下記のポイントが考えられます。
・一定の初期投資が不可欠となるため、コストがかかる
・ブランド価値の低下につながる恐れがある
・管理や意思決定が複雑化し、非効率な経営となる可能性がある
多角化戦略は、形はどうあれ新規市場に参入することで、企業の成長を促す戦略です。
そのため、一定の初期投資やマーケティングコストなどは必要になります。
成果が現れ始めるまでは、コストがかさむことは避けられない点は多角化戦略のデメリットになるでしょう。
また、これまで主戦場としてきた市場と全く異なる事業に参入することで、築いてきたブランド価値が損なわれるリスクもあります。
従業員や既存顧客の混乱を招き、新規事業に参入した結果、どっちつかずのような形で終わってしまうということも考えられるでしょう。
全く異なる市場に参入する場合には、販売やマーケティングのみならず、管理・経営などバックオフィスも複雑化することにも注意が必要です。
既存事業との調整にケアしておかないと、意思決定が遅くなったり、リソースを過剰に消費したりといったリスクが考えられます。
多角化戦略を成功させるポイント
最後に、多角化戦略を成功させるためのポイントや注意点について解説します。
特に個人〜小中規模の事業者において、多角化戦略を進める上で守るべき点は下記の通りです。
・既存事業と関連性があり、シナジー効果に期待できる事業を選択する。
・可能な限りコストは最低限にし、スモールスタートを目指す。
・M&Aの活用も視野に入れる。
まずは、個人や小規模のビジネスオーナーであれば、よほどのことがない限り、集中型や集成型多角化は避けておく方が無難です。
ただでさえリソースが限られている上、全く異なる市場で新規事業を走らせるとなると、かなりの負担が増加することになるからです。
水平型・垂直型のどちらかで、既存市場からプラスαのシェアを獲得しにいくという流れであれば、これまで蓄積されたノウハウや商習慣も活用できます。
なるべく小さな事業から始め、コストを抑えておけば、スピード感を持って進められる上、フィードバックも素早く実施可能です。
できる限り、大きな投資や転換を避けながら進めるといいでしょう。
また、小規模な事業であれば、なかなか多角化戦略も行いにくいと考える人も多いかと思います。
そんな方は、ぜひ一度小規模のM&Aを検討されてみてはいかがでしょうか。
自社と関連するWebサイトの買収や、自社関連製品を販売するECアカウントなど、シナジー効果を期待できるスモールスタートが可能となります。
当社で仲介しているこちらの案件一覧をご確認の上、気になる案件があればお気軽にお問い合わせください。
参考までに、当社サイトマで多角化戦略の一環として買収に成功された実例もございます。
あわせてお読みいただければと思います。
参考例① 通販の立ち上げコンサル事業の運営者が、自社運営用途でEC事業を買収
参考例② 少子化の波を受け、教育関連事業の経営者が、漫画販売ECアカウントを買収
まとめ
多角化戦略と、成功させるポイントを中心に解説いたしました。
既存事業からの脱却を図る企業や、スケールアップを目指す個人事業の方など、新たな市場で勝負をしたいケースはどこかのタイミングで訪れるものです。
コロナ禍や人手不足など、外的な要因も様々ありますが、多角化戦略が成功すると大きな成果につながるはずです。
参考になりましたら幸いです。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。