ウェブサイト運営における法律は何をチェックするべき?4つの法律について解説
普段頻繁に意識することはないと思いますが、ウェブサイト運営には多くの法律が関わっています。
そして、実は法律を違反している状態にあるサイトというのは意外と多くあるものです。
「あのサイトがやっているからいいだろう」という考えで運営していると、もしかすると後々大きなトラブルになるかもしれません。
そこで、ここではウェブサイトを運営する上で、重要となる法律をいくつかピックアップしてみました。
特にトラブルとなりやすいものをまとめましたので、ぜひ参考にしていただけましたら幸いです。
押さえておきたいウェブサイト運営における法律
ウェブサイトを運営する上で、チェックしておくべき法律は主に下記の4点です。
①著作権法
②景品表示法
③個人情報保護法
④特定商取引法
それぞれ詳しく解説します。
①著作権法
まずはサイト運営において、最も注意するべきポイントとして著作権法があります。
サイト運営に限らず頻繁に耳にすることも多いので、今回ピックアップしたものの中でも、比較的身近なものでしょう。
なんとなくイメージはついている方がほとんどだと思いますが、改めて紹介してみます。
まず著作権に関わるそれぞれの言葉の定義は、下記の通りとなります。
・著作物
第二条 第一項 著作物 「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」
・著作者
第二条 第二項 著作者 「著作物を創作する者をいう。」
参考リンク:e-GOV 著作権法
特に、トレンドサイトや漫画・アニメ・ドラマなどのエンタメ関連に関わるサイトの運営者は特に気をつけたい法律になります。
インターネット上にある音楽・動画・イラスト・写真などはもちろんのこと、コンテンツとしての文章やSNSの投稿内容も含め、これらは原則、すべて著作者に権利が帰属する著作物です。
また、いわゆる「フリー素材」と呼ばれる、無料で使用できる画像やイラストなどをよく利用されている方も多いはずです。
これらは、著作者が著作権を放棄しているというスタンスのものですが、こちらは完全に著作権を手放しているというわけではないことに注意が必要です。
例えば、フリー素材として有名ないらすとやの利用規約を見てみましょう。
いらすとやは商用・非商用問わずに利用を認めていますが、著作権自体は運営者であるみふねたかしさんに帰属すると明記されています。
著作権
当サイトの素材は無料でお使い頂けますが、著作権は放棄しておりません。すべての素材の著作権は私みふねたかしが所有します。素材は規約の範囲内であれば自由に編集や加工をすることができます。ただし加工の有無、または加工の多少で著作権の譲渡や移動はありません。
その他
当サイト以外に掲載されている私の作品については、無料ではお使い頂けません。素材を利用することによって発生したトラブルについては一切責任を負いかねます。
全ての規約は予告無く改変する場合があります。予めご了承ください。
つまり、商用であれ利用することが可能ですが、いらすとやの素材を加工して商標登録などはできないということになります。
この線引きについては各フリー素材のプラットフォームにより異なりますので、フリー素材を利用する場合は必ず利用規約を確認した上で利用しましょう。
②景品表示法
景品表示法は、ECサイト運営者や商品をPRするアフィリエイトサイトに関わる法律となります。
こちらについては過去にECサイトとの関わりについてまとめた記事もありますので、合わせてご一読ください。
【関連記事】ECサイトにおける景品表示法の重要性とは?対象範囲と事例について解説
下記のリンクにある通り、景品表示法は「不当景品類及び不当表示防止法」という法律で定められています。
参考リンク:e-Gov 不当景品類及び不当表示防止法
概要のみをお伝えすると、PRする商品やサービスを、事実より良いものに見せたり、競合他社を悪く表現したりということを禁止するルールです。
特にインターネット上においては、商品をPRする際にはついつい誇張した表現になりやすく、また自由に表現できるため、都合よく編集することができます。
自社の商品やサービスを魅力的に見せるという作業は必要ですが、くれぐれもやりすぎには注意しましょう。
どこまでが違反でどこまでが適切な表現かの線引きはケースバイケースとしか言えませんが、下記の通り、消費者庁がガイドラインを出しています。
参考リンク:消費者庁 景品表示法関係ガイドライン等
既に何かしらのPR素材や資料などを作成されている方は、改めて上記のページを確認しながら、チェックしてみるのもいいかもしれません。
③個人情報保護法
続いて、利用ユーザーの氏名や住所、メールアドレスなどの情報の取り扱いに関する法律である、個人情報保護法です。
参考リンク:e-GOV 個人情報の保護に関する法律
この個人情報とは、下記の通り第二条にて定義されています。
第二条 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号にいずれかに該当するものをいう。
一 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。次項第二号において同じ。)で作られる記録をいう。以下同じ。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。)以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)
二 個人識別符号が含まれるもの
かなり難しい表現になっていますが、「特定の個人を識別することができるもの」が全て個人情報に該当すると考えておくといいでしょう。
言い換えば、あなたの運営するサイトにお問い合わせフォームなどを設置している場合、「個人情報を取り扱っている事業」だと見做されるということです。
この場合、事業者は個人情報の保護に関する法律の第二節、「個人情報取扱事業者及び個人関連情報取扱事業者の義務」という箇所に定められる義務を負うことになります。
具体的には、例えば下記のようなルールとなっています。
・個人情報を取り扱うときは、できる限り利用目的を特定しなければならない
・本人の同意なく、あらかじめ定めた利用目的以外に個人情報を利用してはならない
・個人情報を取得した場合、あらかじめその利用目的を公表するか又は本人に通知しなければならない
・あらかじめ本人の同意を得ることなく第三者に個人情報を提供してはならない
・個人情報が漏えい、滅失又はき損しないよう安全管理措置を講じないとならない
以前解説した、改正電気通信事業法にも大きく関わる内容となります。
下記記事も参考にしていただくと、より一層理解が深まるかと思います。
【関連記事】改正電気通信事業法とは?サイト運営に与える影響について
④特定商取引法
最後に、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする特定商取引法について紹介します。
特定商取引法は、訪問販売やECサイトを含む通信販売など、トラブルになりやすい商取引について、事業者に課せられたルールとなります。
参考リンク:e-GOV 特定商取引に関する法律
特にECサイト、ネットショップを運営する方や、オンラインサロンなど有料コミュニティ運営をされている方は抑えておくべき法律です。
特定商取引を行う事業者は、消費者庁のガイドラインにも記載されている通り、下記のようなルールが定められています。
・販売価格・代金の支払時期と方法・商品の引き渡し時期など、15項目の定められた事項を広告しなければならない
・「著しく事実に相違する表示」や「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」をしてはならない
・事業者から電子メール広告・ファクシミリ広告を、未承諾者に対して送信してはならない
・顧客の意に反して契約の申込みをさせようとしてはならない
ガイドラインをお読みいただくとわかると思いますが、このうちいくつかは、明確に悪意がなくてもついうっかり違反していたというケースも大いに考えられます。
こちらに関しては、大手ECモールのアカウントを運営するといった場合は、そのプラットフォームがカバーしてくれている部分は多くあると思います。
一方で、自社にてECサイトを構築し、運営している際などは特にトラブルになりやすいため、より一層注意しておくといいでしょう。
法律に違反した際の罰則
各法律に違反した場合の罰則・ペナルティについては、どの程度悪質なものかで判断されます。
一般的に、よほど意図的な悪用・流用などを行っていな限りは、刑事罰に及ぶことはありません。
とはいえ、たとえその違反が過失や確認漏れであったとしても、違反は違反ですので、なんらかの行政処分が下されてしまう可能性は多いにあります。
また、著作権違反や個人情報保護法の違反であれば、民事上の責任が問われる可能性もあります。
このうち最も軽いものは行政処分となり、改善措置命令や取引の一時停止などの措置となります。
これだけでは事業の存続自体は可能だと思えなくもありませんが、ブランドイメージが損なわれたり、悪評がついて回ったりする、いわゆるレピュテーションリスクは避けられません。
一度こういった違反が明るみになると信頼性は一気に落ちてしまうため、くれぐれも気を付けるようにするといいでしょう。
まとめ
ウェブサイト運営に関わるいくつかの法律について解説しました。
どんなサイトであれある程度個人情報にも関わりますし、著作権と全く無関係のサイトというのも現実的ではないと思います。
またもちろんのことですが、ECサイトであれば特定商取引、景品表示というものは付きものです。
複雑なルールに思えてしまうかもしれませんが、知らないまま運営していたという言い訳は通じないものばかりです。
しっかりと誠意をもって運営することは当然のことながら、こういった細かなルールもしっかりと抑えて運営していくことを忘れないようにしましょう。