サイト購入費用は減価償却できる?税務上の取り扱いとは?
「サイトを購入したら減価償却ってできるのかな?」「どんな科目で計上すればいいのだろう?」
はじめてサイトを購入しようと検討されている方には非常に気になるテーマですよね。
また、事業をしていて得られた利益をサイト購入に当てることで経費にできないか?
こう考えられている方もいると思います。
そこで今回は、サイト購入における会計知識の概要についてまとめてみました。
ぜひともこちらを参考に、サイト購入検討に役立てていただければと思います。
ただし、記載内容は、あくまで一般的な内容であり個々のケースについては必ず税理士又は税務署に確認をするようにお願いいたします。
この記事に基づく判断による損害等の保証はいたしかねますので、何卒ご了承ください。
サイト購入費は減価償却できるか?
まずはじめに、サイト購入は企業買収の一種であり、その中でも「事業譲渡」該当します。
そのため、税金の計算は企業・あるいは個人がサイトという資産を他の企業・個人より買収したというケースに準じて取り扱います。
結論から申し上げますと、サイト購入費用を減価償却対象として取り扱うことは可能です。
実際に、国税庁に確認をしたところ、「いかなるサイトを買収しても『ソフトウェア』という科目として計上してください」とのことでした。
これはアフィリエイト、EC、アマゾンアカウントなどどんなものであれ該当します。
さらに細かい情報になりますが、実は「ソフトウェア」の中でも「自社利用目的」か「市場販売目的」かで耐用年数が異なります。
ですが、サイト購入においてはほぼ100%「自社利用目的」に該当するため、特に気にする必要はないでしょう。
(「市場販売目的」は販売目的のソフトウェアのうち製品マスターを制作し、それを複写したものを不特定多数の顧客に販売する場合を指します。)
参考リンク:No.5461 ソフトウエアの取得価額と耐用年数
上記参考リンクにも記載がありますが、自社利用目的の場合、WEBサイトの税務上の耐用年数は5年となります。
つまり、原則として1,000万円のサイトを購入した場合、毎年200万円ずつ5年間の経費計上が可能ということです。
サイトの購入が節税になる仕組み
上記の通り、1,000万円のサイトを購入すると、200万円分を経費で計上できるため、その分の節税は可能になります。
一方で、税理士さんによっては、アフィリエイトサイトであれば全額損金として計上する(一括償却する)ことが可能という考えを持っていることもあるようです。
これは、「アフィリエイトサイトを購入するということは、インターネット上でアクセスが集まる場所を買うこと」という解釈を基にしています。
言い換えるのであれば、テレビやラジオ番組のCM枠を買うのと同様の認識で、買収金額を広告費として計上するという考え方です。
事実として数年前(本記事執筆は2021年5月です)までは、システム・プログラムが組み込まれていないサイトは、広告費として取り扱うという慣行もあったそうです。
確かに、サイト購入前から自社で販売している商品を、新たに購入したサイトというプラットフォームで販促を行うというケースであれば、広告費として取り扱うのも頷けますよね。
もしこういったケースにぴったりと当てはまるのであれば、サイト購入によって大幅な節税を実現できるのかもしれません。
ですが、こちらに関してはやや極端な解釈にもなってしまうので、必ず税理士さんに相談してから判断しましょう。
本記事の内容だけをもとに判断することのないよう、あらかじめご了承ください。
サイト購入における資産の種類と仕訳例
ここまで述べてきた通り、原則としてサイト購入は企業M&Aのなかの事業譲渡に該当します。
ですが、サイト購入においては企業M&Aでよく見られるような建物や機械などの備品のような形のあるものはほとんどありません。
このような場合建物などの「有形固定資産」と区別して、「無形固定資産」と呼ばれますが、名前の通り、扱いとしては「固定資産」として取り扱われます。
なかでも、サイト購入においては、上でも触れた「ソフトウェア」の他にも「のれん(営業権)」が関わる場合もあります。
一部重複しますが、それぞれどういう取り扱いになるかということと仕訳例についてもまとめてみました。
なお、一部の有形固定資産については償却の初期に多くの減価償却を行う定率法を選択することができますが、無形固定資産については定額法しか選択できません。
定額法とは、その名の通り毎年定額で減価償却する償却方法であり、事業年度の途中から開始されたものは月割りで計算されます。
サイト購入においては多くの場合無形固定資産のみとなるため、全て定額法で償却する必要があることを覚えておくといいでしょう。
ちなみに、減価償却の対象となる条件は、
・その使用可能期間が1年以上のもの
・取得価格が10万円以上のもの
の両方を満たすものとなります。
ご存知の方も多いとは思いますが、改めて確認しておきましょう。
1.ソフトウェア
上記の通り、「ソフトウェア」は、会計上「自社利用目的」か「市場販売目的」かで取り扱いが異なります。
そして、サイト購入の場合はほぼ間違いなく「自社利用目的」となります。
「自社利用目的」の場合のWEBサイトの耐用年数は5年間なので、仕訳は下記のようになります。
例:3月決算の法人が、600万円のアフィリエイトサイトを前年10月に購入した場合。
【取得時】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
ソフトウェア | 600万円 | 現金預金 | 600万円 |
この時、定額法により事業年度の途中から開始されたものは月割り計算になるため、
年間の減価償却費は600万円÷5年=120万円。
使用していたのは6ヶ月間なので、120万円÷2=60万円を減価償却可能ということです。
【決算】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
減価償却費 | 60万円 | ソフトウェア | 60万円 |
2.のれん
企業M&Aにおいては、買収された企業の時価評価資産と、買収された金額とが一致しないケースがあります。
企業には土地や建物、現金などの他にも目に見えない資産が存在するからです。
言い換えれば、その企業のブランド力や信用力のようなものが、買収金額と時価評価資産の差となって現れます。
この差のことを、「のれん」や「営業権」と呼び、税務上「資産調整勘定」として取り扱われます。
この資産調整勘定も、ソフトウェアと同じく償却期間は5年となっています。
特にサイト売買については、多くの場合が無形資産によるものになるため非常にイメージしにくい点ですね。
具体例を挙げるとすると、月間平均営業利益15万円を上げるECサイトで、販売価格約20万円分の商品在庫も一緒に譲渡される案件があったとしましょう。
一般的には直近半年の月間営業利益平均×20〜24か月分で譲渡金額が決定されることが多いです。
この場合、このECサイトの一般的な評価額は、(営業利益15万円×24ヶ月分)+在庫20万円分=380万円となります。
ですが、このECサイトはいくつもの仕入先を抱えており、定期的に購入するリピート顧客もついていました。
そしてそれら全てがECサイトのドメインや在庫とともに、譲渡対象となっていました。
そのことが評価されたのか、買い手との交渉の上、譲渡金額500万円での契約となりました。
この場合、差額の120万円分が資産調整勘定となるということです。
上記のECサイトを、3月決算の会社が前年の10月に購入した場合を見てみましょう。
【取得時】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
ソフトウェア | 360万円 | 現金預金 | 500万円 |
棚卸資産 | 20万円 | ||
のれん | 120万円 |
このとき、それぞれの償却費用は6ヶ月間の月割りになるため、
【決算】
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
減価償却費 | 36万円 | ソフトウェア | 36万円 |
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
のれん償却費 | 12万円 | のれん | 12万円 |
のようになります。
まとめ:自分で判断せず、税理士・税務署の判断を確認しましょう。
サイト購入の際の減価償却や費用計上に関してまとめてきました。
繰り返しになりますが、ここにまとめた情報はあくまで一般的・原則的な内容となります。
WEBサイト購入の税務上の取り扱いについては、税法上しっかりと定義されている部分が少なく、様々な解釈があります。
うまく情報収集をおこない、しっかりと準備しておけば大きなメリットを得られるかもしれませんが、明確でない分リスクもあることも事実です。
「まあこのくらいでいいだろう」「こういう取り扱いになるはずだ」で進めてしまうと思いも寄らないペナルティが課されるかもしれません。
ですので、個々のケースについてはくれぐれも自分で判断せずに税理士や税務署に相談の上、計上するということを忘れないようにしてください。
あなたのサイト購入が成功されることをお祈りしております。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。